実施内容

~放課後児童クラブについて~
厚真町長期滞在プログラムの軸となる活動が子どもたちと関わる事でした。その中でも厚真中央小学校の隣にある放課後児童クラブには、期間中ほぼ毎日足を運びました。プログラムに参加した大学生は期間の異なる1〜2週間で滞在し、2か月間のプログラムの中で参加者が何度か入れ替わり行われました。そのため、毎日活動後におこなっていた振り返り会で話した内容をノートにまとめていました。プログラム後半の参加者もこのノートを引き継ぎとして活用することで、いざ児童クラブに行ったとき、大きな不安なく活動に取り組むことができました。

あやね:子どもたちとの関わりも大切でしたが、支援員(職員)の会議に参加させてもらい、支援員としての葛藤や児童クラブの運営、子どもたちとの関わり方について深く話し合いがされていて、児童クラブのウラ側を見られたのがよかったです。
おう:私はプログラムの中盤からの滞在でしたが、プログラムの最初に滞在していた学生が作ってくれた基盤があり、子どもたちと学生が関わりやすい雰囲気がすでにありました。アットホーム感もあり、最初は少し距離を感じた子も学生に積極的に関わってくれて嬉しかったです。

~イングリッシュキャンプについて~
イングリッシュキャンプは主に中学生が参加する、英語のみを話すイベントです。何度も開催されているイベントで、今回はボードゲームやモルックなどのゲームをしながら、旅行や留学を想定したストーリーの中で病院や銀行、交番などのシチュエーションに応じて英会話をしていました。この時はこう表現する、みたいなお手本があるわけではなく、参加者一人ひとりが自分の話せる英語を駆使して会話を進めていました。身振り手振りをたくさん駆使する人もいれば、精一杯、自分の言葉でのコミュニケーションを試みている人もいて、参加している学生一人ひとりの色も見れました。

こー:僕たち大学生も少しだけ混ぜてもらいました。自分の話す言語だけではなく、その場にいる人全員が英語しか話さない環境で、普段、意識していない脳を使っている感じがして新鮮でした。町内にいながら留学しているのと同じ環境に身を置けるのは面白く、自分も中学生の時に参加したかったと思いました。


〜染め物体験について〜
放課後子ども教室で染め物体験に参加しました。私たち大学生はプログラムの都合で午後から参加しましたが、子どもたちは午前中、染め物に使う材料を集めに森に行っていました。大きな鍋に葉っぱをいっぱい入れて煮詰めて、色が出てきたら無地のポーチに入れてまた煮詰めて…。染め上がったらみんなで外にでて、走り回って乾かしました。

あいこ:どの工程も子どもの頃に戻ったようでわくわく!子どもたちもいきいきとしていて、自然を活かした活動を通して厚真町の魅力を再発見しました。

~あつマルシェについて~
長期滞在プログラムの最終日には「あつマルシェ」が行われました。厚真町でしいたけ栽培を行う堀田農園さん(https://tanoceee.com/)の出店を手伝いました。イベントでは、厚真でとれた新鮮な野菜やそれを使った料理をふるまうテナントが並び、多くの来場者が訪れていました。

あいこ:出店の手伝いを通して、地域の方々の声を直接聞けるのは励みになり、地域の方々に愛されているなぁと実感しました。プログラムでお世話になった方や児童クラブの子どもたちもたくさんいて、地域のつながりがこういうイベントから拡がり、それと同時に結束も強まることを再確認しました。ぜひたくさんの人に訪れてほしいと思ったのと、私は来年もまた行こうと思いました。

参加者の声

活動は主に午前中の農作業、午後の放課後児童クラブでの活動、夜の振り返り会の3つで、土日や雨の日は厚真町を散策したり、イベントに参加したりしました。印象深いのは夜の振り返り会。その日1日で考えた事、感じた事、モヤモヤした事、嬉しかった事、そういった心の内を言語化する時間です。「少し」危ない事をした子どもに注意をするべきか、そしてどう伝えたらよいのかなどその日あった出来事について考えていましたが、日が経つにつれて考えることはより広くなっていきました。放課後児童クラブで一緒に子どもたちと関わる指導員の方との関係性、何度も接する上でわかった子どもたちの性格や得意不得意についてなど、1回の活動では見えない悩みが次第に出てきました。
また、言語化できない事もありました。私たちが滞在した2023年9月は胆振東部地震発生から5年の年でした。追悼の日は地域の人と一緒に、私たちも吉野地区という場所にある献花台に行きました。吉野地区は1キロにわたる大規模な土砂崩れが発生し家屋の倒壊など甚大な被害が出た地域です。すでに土砂や瓦礫は撤去され、田畑が広がっていました。山肌に木がないという点で少し異質な雰囲気はあったけど、お話を聞くまではそういう場所だとはわかりませんでした。震災以前に住んでいた人から話を聞くと今の光景からは想像できないほどの被害の大きさに、言葉にするのを躊躇するような、浮かんでこないような、明確な言葉にできないモヤモヤした気持ちだけが残りました。どうやら、それは他のメンバーも一緒だったようで、その日の振り返り会は少し重たい雰囲気でした。でも、言葉にしようとトライすることは無駄ではなくて、「人に伝えようとしなければその次の世代は知らないことになるし、この時代に生きていることに意味がある」といった他のメンバーの言葉が大事だと思っています。
震災の時だけではなく、放課後児童クラブでトラブルがあった時や、普段の生活の中でモヤモヤした時も、時間がかかっても相手に伝えるという事を大切にしていました。長期滞在が終わった後にも、ニュースを見たり、何かに触れるたびに、今まで考えていなかった部分に疑問を抱くようになっていました。今回の長期滞在プログラムでは農作業や放課後児童クラブ、イングリッシュキャンプや地域のイベントの参加など色々な経験をすることが出来ました。その全てに共通して学んだ「感じた事を言葉にする大切さ」を今後も忘れず、大切にしていきたいです。(こー)

私自身、この厚真長期滞在プログラムで気持ちの変化が1つありました。それは、モヤモヤすることも1つの正解なのだということです。ほぼ毎日放課後児童クラブに行って、子どもたち、厚真町の教育委員会の斉藤烈さん、放課後児童クラブの支援員さんとかかわっていく中で、どうすることが最善なのか、1週間、2週間だけの関わりの中でどのように接するのが良いのか考えることもありました。それらは答えの出ないモヤモヤとしたもので、はっきりとした“正解”を見つけたくてなりませんでした。正解を見つけることが自分自身の立ち位置が分かる手っ取り早い方法だと思っていたからです。しかし、この長期滞在中に接点のあった厚真町教育委員会の斎藤さんやNPO法人ezorockの草野さんにこのことを話すとこのモヤモヤする感情、やるせない気持ちでいいのだと教えてもらいました。答えを出さないことが正解というのではありませんが、このように葛藤し反芻して考えることが大事なのだということを知りました。
地域づくりにおいて、子どもたちとの関わりにおいて、それだけでなく人との関わりやそこに置かれる環境に不安なことや答えのないモヤモヤは誰しもあるものだと思います。今回の厚真長期滞在のプログラムでは、自身のモヤモヤと向き合いながらも目の前の人とのコミュニケーションを大切にすることを学びました。(おう)