実施内容

・共同生活
イコロの森での滞在中は、参加メンバーが同じ屋根の下で生活しました。ひよこたちの鳴き声で目覚め、動物たちへのエサやりから始まる朝。みんなで朝昼晩の食事を作り、部屋の掃除をし、順番にシャワーを浴び、時には森のサウナで深い話をする日もありました。また、森の一画には、大雨の中設置したドーム型ハウス「EZDOME」。どしゃぶりの中、メンバー同士で息と心を合わせドームを組み立てているうちに、強いチームワークが生まれていました。そんなEZDOMEで、寒く暗い森の中、ひとりきりの夜も経験しました。

顔見知りもいれば初対面もいる空間で、私たちの生活はいつも何かが起こっていました。10泊もするのに歯ブラシすら持ってこなかった人。初めての電柵に5回も打たれる人。ニワトリを怖がっていた初日を忘れるくらい凛々しく、ニワトリのポッポを抱きかかえる人。日に日にボロ取り(馬糞の処理)の速度が増す私たち。「はじめまして」のわずか30分後に、都会と森との暮らしについて真剣に語り合う夕食。男女関係なく入れるネイチャーサウナで、森での時間軸への違和感をしみじみと語り合う夜。焚き火に命を懸ける男とのちょっとしたすれ違いが生んだケンカ…
日を重ねるごとに、メンバーそれぞれの個性やキャラクターが爆発し、アクシデントさえも笑って語り合えるようなにぎやかな日々を過ごしました。そんなみんなとの生活で、自他の強みを活かし合うこと、チームで頼り合い協同的な関係を築いていくことの大切さを実感しました。そして、自分自身の良いところにも嫌な部分にも気づくことができ、イコロに来る前よりも一歩、成長できたような気がします。共同で生活するということは、チームで行動するということ。一人一人が互いを思い合うことが必要です。だからといって相手に干渉しすぎるわけでもなく、互いの共通点を見つけあったり、1から共通事項を作っていく中でコミュニティが作られていくということを感じたメンバーもいました。今回の、仲間や動物たちとの共同生活で経験した協同的・協働的な出来事一つ一つを心に留め、他者との関わりやよりよいコミュニティづくりに活かしていきたいです。(おにぎり)

・調馬索
「調馬索」は丸い柵の中で馬とコミュニケーションをとりながら馬を走らせたり歩かせたり緩急をつけながら運動させるものです。腸の動きを活発にさせたり、エネルギーを発散させたり、身体の左右のバランスを整えたり…飼われている馬にとって大事な活動です。柵の中心で手綱を握り、この世に一人と一頭しかいないと思いながら、声のトーンや大きさなどありとあらゆるツールを使って自分の思いを馬に伝えます。イコロの森では、ちょっと繊細な性格のカントという茶色い毛のどさんこ馬と交流をしました。
 普段からイコロの森で活動するキングさんの声や動きに反応して気持ち良さそうに柵の中を走るカント。外から見ているだけだとなんだか簡単そうに見えました。声を変化させ、鞭を使って立ち位置は後ろ、目線はお尻の方…頭の中で色々なイメージを浮かべながら挑みましたが、これがなかなか難しい…色々試して見ましたがカントはうんともすんとも言わず。「そんなんじゃ僕には伝わらないよ」と言っているようなカントの瞳にどんどん私は自信を無くし、泣きそうな声と顔で「カント、動いてー…」と訴えかけるも惨敗。言語に頼らないコミュニケーションの難しさを実感しました。
カントは繊細な性格で、捕まえることすらできない時もあったため、関わり方についてかなり悩みました。そんなカントを通して自分自身を見つめ直すことができました。この体験で自分の直したい癖に気づくことができたと振り返るメンバーや、少し成功しただけでかなりの達成感や高揚感を得られたと話していたメンバーもいました。
SNSが普及し、言葉を頼りにコミュニケーションするのが当たり前になっていました。しかし、本来コミュニケーションとはありとあらゆるツールを使って自分の思いを伝えることなんだと改めて感じることが出来ました。伝えたいことが相手に伝わっているのか、相手が伝えたいことを自分は理解しているのか…。私たちはカントと調馬索をしてから日々悩んでばかりです。しかし、それだけ良い学びをすることができたんだと思います。
コミュニケーションの悩みとはまだまだお友達ですが、今後もカントが教えてくれた大事なことを忘れず、試行錯誤しながら目の前にいる人とコミュニケーションをしていきたいです。(ココ)

・出会い
イコロの森では、毎日が新しい人との出会いの連続でした。EZDOMEの解体のときに手伝いに来てくれた方。とある夜にふらっとイコロに来てくれたキングさんの親友。羊のお引越しのときに手伝いにきてくれた方…。毎日初めて会う方々と、会ったその日に共同作業をし、夜ご飯を食べるという、イコロの森ならではの非日常な体験をすることができました。活動中は、毎晩振り返りの時間があったため、同じ活動をしても考え方や感じ方が人それぞれであることを実感しました。そのおかげで、日に日に活動への思いや感じ方、自分の弱みを意識して生活することができたと思います。また、新しく出会った人と、語り合う環境が整っているイコロの森だからこそ得られたものであると思っています。新しい人と毎日会い、語る経験は滅多にできません。いろいろな人の出会う場所になっているイコロの森だからこそできた経験を、これからの生活でも大切にしていきたいです。(たんたん)

 

※本記事は、休眠預金を活用した『北海道未来社会システム創造事業』を活用し作成しています。
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