前編はこちら⇒ http://179relations.net/action/70

言葉にできない成果

タケシ:ボラ旅の運営体制の話だけど、ボラ旅はななこがメイン担当になっていて道内各地から「ボランティアに来てほしい」っていう依頼を受けていました。依頼を受けたら、ボランティアを募集してたよね。ボランティアへの説明会はどうしていたっけ?

ななこ:やってなかった活動が多かった。

タケシ:やってないんだっけ!?そっか、じゃあ、いきなり「現場行ってね」って感じ?

ななこ:そう。自分も一緒に行ってたし、集合場所で会って自己紹介から始めていた。

タケシ:なるほど(笑)そこで集まって「じゃあ行きますよ」と。活動に参加する前後、ミーティングとかがあるわけでもないんだよね。

ななこ:旭岳(※1)といくつかの活動以外は、ミーティングはなかった。

タケシ:単発で行って帰ってきてを繰り返すという、まさに”ボランティアしながら旅をする”のが当時の動きだったけど、その点で運営上の課題点とか難しかったなと思うポイントがあれば教えてもらいたい。

ななこ:もう、全てが難しかった。単発の活動を繰り返して自分たちには何ができるのかな、何かできたのかなという気持ちは、何回も行っているボランティアからは生まれるようになった。例えば、イベントのお手伝いで、その時マンパワーとして役に立ったらおしまいという感じで、地域活動に継続的に関わるわけじゃないこともあったり。継続的に関わりたい気持ちはあったけど、できていなかった。

タケシ:僕も一緒にお手伝い行ってた時に、なんとなく行って地域の人と触れて「良い時間だったな」とか「お互い良かったね」っていうのは感じていたし、これも意味あるよねって言っていたけど、それ以上何か生まれるかというとそこまでっていうような。それ以上の深い発展があるわけじゃなく、意味はあるけど、もやもやするって感じね。

ななこ:そんな状態でも、何かボランティアの変化を見える化するために、毎回活動の最後に活動日誌を書いてもらっていた。考えが変わったことありましたか?印象に残ったことありましたか?って。それが大事だと思って。でも、それで地域が変わったとか、その人がその地域に移住したとかは短期的には無くって。成果は、長期的な目線で見ないとわからない。まとめると、当時の悩みは、参加人数や活動日以外の成果って何なのかっていうことを表現する事。地域やボランティアの何が変わったの?を模索し続けていた。

タケシ:当時は「関係人口(※2)」という言葉がないんですよ。ないので、ボランティアが地域に入ってお手伝いしててなんか良いことしてるねっていう感覚が強くて。「意味はあるんだろうな。けど、けど…」みたいな表現しきれないところが、なんとなく課題感としてあった。

ななこ:多分、「関係人口」という言葉がないことで、活動のゴールは「移住」なんですか?って認識になっちゃって。じゃあ1人も移住してないってことは意味がないんですか?ってことになり兼ねなくて。そういうことだけではないけど、どう表現したらよいか迷っていたのかもしれない。

タケシ:世の中の評価としては「移住した」とか「就職した」とか「地域に入っていった」みたいな言葉で表せる、見えるところしか”意味”と捉えてもらえない。日々取り組んでいること、更には言語化できない部分にはあまり価値を見出してもらえない。良いことしているんだねくらいの評価なんだよね。

ななこ:うん、言葉で表現できない成果についてもやもやしていた。

(写真:下段左端がななこ、上段左端がたに)

NPOで活動するということ

タケシ:ボランティアの変化が大事だと思ったというところ、もう少し詳しく聞いていい?

ななこ:ふくしまキッズで学んだけど、狙いを決めてボランティアプログラムをガチガチに組んでも、あまり意味がないかなって。そうじゃなくて、テーマだけを決めてその場に行って、地域の人とそのテーマに向かって一緒に活動することで自分自身で気づくことがある。それは100人いたら100通り。そこをコントロールしようとすることは、あまり意味がないと感じた。だから、それぞれが何を体験して、何を見て、どういう話を聞いて、何を持ち帰ったのかなっていうことを、毎回全員に必ず訊く時間を設けていた。訊くことで振り返りになって、それが活動の成果だと考えていました。

タケシ:なるほどね。ななこは2018年3月までezorockの職員で、担当から外れて2年半経ったと思うんだけど、地域と関わる価値について当時とは違う評価ができるはずだと思うんだよね。今は社会人として働きながら地域の人とボランティアがお互いを刺激しあう時間に、どういう価値や意味を感じている?

ななこ:うまく言えないけど、価値はとてもあると思っている。私もNPO職員から一般企業に転職するときに、今までの経験を切り離して心機一転やらなきゃいけないと思っていたけど、実際には役に立ってることが多い。それは、主体的な意識・行動とか、ゼロから作りあげることへの姿勢とか、正解がない中で模索すること自体に挑戦できるとか。壁に当たった時に何かのせいにするのではなく、自分でどうしようかなって、何ができるかなって模索すること。そして「ボランティアマネジメント」はチームや部署のマネジメントという点でどんな組織にも繋がるなって。意外とそういうことが出来る人は社会の中には多くないことを知って、ezorockはそういうことが育める場所なんだなって気付いた。

タケシ:まぁ確かにね。ななこは転職する時に、「NPOで働いていた人は民間では通用しない」みたいなことを言ってた。だけど、蓋を開けてみれば全然そこは関係ないってことが、ななこ自身で表現できてるのかなと思うんですけど。そういう意味では、NPO職員として学んだことが民間やいろんなとこで役に立つ。NPOで活動した経験は、価値があるんだなってね。

ななこ:うん。それは言えると思う。NPO職員だけでなく、ボランティアとして関わるみんなも。

※1 旭岳:大雪山国立公園旭岳自然保護プロジェクトのこと。詳しくはこちら
※2:「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。(詳しくは総務省のこちらのホームページをご覧ください。)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。第3章は「活動の背景・初期の想い」について、さらにななこの思いを深掘りします。次回もお楽しみに!
後編はこちらから⇒ http://179relations.net/action/77

 

※本記事は、休眠預金を活用した『北海道未来社会システム創造事業』を活用し作成しています。
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