実施内容

秋もすっかり深まり、なんなら雪まで降り始めた11月12日。私たちは、浜益コミュニティーセンター「きらり」に居ました。何をしにここに来たかと言うと、浜益小劇場定期公演「ネットワーキング浜益~浜益ふかんば物語~」を観るためです。浜益小劇場?ネットワーキング浜益?ふかんば?と頭の上にはてなが浮かんでいる人も多いことでしょう。浜益小劇場とは、「現在・過去・未来を感動でつなぐ」をモットーとして、浜益の歴史や浜益にちなんだものをテーマにした様々な創作劇をする劇団です。そして今回、この浜益小劇場の定期公演で上演されるのは、浜益で機関誌「ネットワーキング浜益」の制作に奮闘した、「浜益・自然に学ぶ会『ふかんば』」のメンバー6人を中心とした物語。実話で、演じるのも地元の方々。浜益の人の物語を浜益の人が演じるというのも面白い所。会場に入ると、実際に刊行された「ネットワーキング浜益」がずらりと並んでいました。地域の人たちも沢山集まっており、開演前の緊張感と楽しみで胸が高鳴っていました。
幕が開き、自転車に乗って颯爽と現れたのは、幌(ぽろ)という地区で商店を営む渡邊千秋さん。この千秋さんが屋久島で情報誌「生命の島」と出会ったことで、浜益の情報誌制作が動き出しました。そこに佐藤時計店の佐藤文諺さん、木村果樹園の木村武彦さんの2人が加わり、話はさらに加速していきます。情報誌を発行する技術が無いと諦めかけていた時、元新聞記者の太田泉さんとその奥さんと出会い、さらにドライブイン浜益の小竹弘子さんも加わり、メンバーが揃います。この集まったメンバーで、「ふかんば」を立ち上げたというわけです。まずは機関誌を作ろうということで、それぞれが得意分野を活かし、奮闘。そして、ついに浜益の情報が詰まった機関誌「ネットワーキング浜益」が完成します。この「ネットワーキング浜益」を作るに至るまでの思いや苦労が、舞台上で繰り広げられるメンバーのコミカルな掛け合いの中から伝わってきます。メンバー皆、ふかんばの他にも仕事があり、家庭があり…と大忙しの日々の中で、これほどまでの機関誌を作りあげたことに驚いたのと同時に、思いの強さに感動してしまいました。

ふかんばメンバー以外にも、個性豊かな面白い登場人物たちが舞台を彩ります。メンバーの家族や奥さん、ふかんばを取材にきたNHKアナウンサーなどなど。くすっと笑えて、面白い人たちばかり。なかでも、私が大好きな登場人物は、NHKがふかんばを取材に来た際、沖揚げ音頭を披露した4人の漁師さんたち。この沖揚げ音頭、にしん漁の際に歌われる労働歌。この沖揚げ音頭の歌い方で4人が喧嘩するのですが、その喧嘩がなんとも可愛らしくもあり面白いのです。お客さんの爆笑をかっさらう4人組でした。
こんな個性豊かな人たちに囲まれながら、順調に「ネットワーキング浜益」を刊行していたふかんばでしたが、メンバーの太田さんの引っ越しや、忙しさ、経営するお店の危機など、様々な苦難がありました。そして、いつしか「ネットワーキング浜益」の刊行も止まってしまいます。思いはあるのに続けられないというもどかしさ、1つのものを続けるということの難しさがひしひしと伝わりました。
最後には、数十年経った浜益の図書館で、これまでに発行した数々の「ネットワーキング浜益」を見つけた、渡邊千秋さん、佐藤文諺さん、木村武彦さんが3人で「ネットワーキング浜益」を見ながら、「金はかかるし、手間はかかるし、時間もかかる。でもいつまでも思い出が残っている。これってアナログの力だよね。」と口々に言い合い、笑顔で幕が閉じます。
様々な物がデジタルに置き換わっている現代。確かにデジタルは便利で使いやすいけれど、アナログだからできること、アナログの力というのは確かにあると改めて感じました。そして、数十年も前に、お金も手間も、時間も惜しまず、機関誌を作ることに奮闘した浜益の人たちがいたということを、今回の演目で知ることができ、より浜益の歴史や地域の人たちのことを知りたいと思えた素晴らしい舞台でした。
終演後は、実際に客席で舞台を見ていた渡邊千秋さん、佐藤文諺さん、木村武彦さんご本人が、「ふかんばの事を劇にしてくれてありがとう。」と浜益小劇場のメンバーに声をかけ、とても温かい空気に包まれて定期公演は終了しました。改めて、アナログの力と浜益の温かさに触れ、私たちは身も心も温まって会場を後にしました。
今回の定期公演で、もうすっかり浜益小劇場のファンに。次はどんな演目を行うのか今からとても楽しみです。

参加者の声

今回、はじめて浜益小劇場を観劇させていただきました。以前から話を聞いていて存在は知っていたものの、実際に観劇するのは今回が初でした。会場が暗転してお芝居が始まると一気に世界に引き込まれて、思わず見入ってしまいました。会場にはお芝居の題材になっている「ふかんば」の記事が展示されており、休憩時間や劇が終わった後にじっくりと読むことができ、当時の様子に思いを馳せる貴重な体験となりました。次回の浜益小劇場も目が離せません。

(記事を書いた人 みさき)

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